flos sapientia

ネギまのSSや詩を書いてます。

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SSです。
長いので、続きからどうぞ。



暗くなった階段を上り、屋上に出る。視界が開けると、そこにはオレンジ色の世界が広がっていた。横から真っ直ぐ向かってくる光に、さよは目を細める。
空も、街も、そしてこの学校も、とても綺麗に染められていた。それは懐かしいようでもあり、悲しさがどこかに漂っているようでもあった。
様々な思いに満ちた世界が、さよを包んでいた。
「……」
昇降口を出てそのまま少し進み、突き当たりの柵で止まった。
光は変わらずに世界を照らし、眩しくて、温かかった。風も、いたずらに頬や髪を撫でては、消えてゆく。

陽の温かさや風の心地よさは、さよにも感じることができた。何も感じない、一切触れられない、という状態にならなくて本当に良かったと思う。

でもやっぱり物を触ることはできないし、人ももちろんダメだった。
(人、ですか……)
身体がこの世に存在していた時、当たり前だと思っていた人のぬくもり。家族や友達の温かさは、ずっと感じていていいんだと信じていた。
私でも、それくらいは願っていいはずだと思っていた。
15年という期間は、ちょっと短かったのでは、って何度も思ったけど……それくらいで丁度よかったのかもしれない。
それに最近は、クラスのみなさんとお話したり一緒に過ごしたりできるようになれた。
私は、なんて幸せ者なんだろう。
すぐそばにいながら、触れられないけど。私も人も、確かに存在してる。
(……雲みたい)
さよは一人で苦笑した。
遠くからしか見えない雲は、近寄れば見えなくなったり形を成さなかったりする。
私も人も、近寄ってその姿が揺らぐものでもないのに。
ただ、触れられないだけ。
一緒に話すことも、一緒に笑うこともできる。
それは、とても幸せなことなのに。
(……これは、夢、なのでしょうか)
私も、この世界も、すべてが夢。いつかは目が覚めて、すべてが消えてしまうのかもしれない。
私が「世界」だと思っていたもの。それは、私一人の理想だったのだろうか。
本当に、これは夢だったのだろうか。
(いいえ……、違います)
さよは首を横に振って、自分の考えを否定した。
人も、この世界も、消えることはありえない。絶対に失われるはずはなかった。
(消えてしまうのなら……私ですね)

夢を見ているのは、私だけ。目が覚めてこの世界からいなくなるのは、私一人のはずだった。
もしかしたら、私自身が夢なのかな、とも思えた。

(目が、覚める……)
夢なら、いつかはそうなってしまう。
……それはいつなんだろう。もしかしたら明日かもしれないし、何十年後かもしれない。
好きなことや幸せを感じることができても、自分では終わりを決められないものが、夢だから。そして、普通は長くは続かないものだから。
私は、ただ流されてゆくことしかできない。
でも──。

「相坂さん……」
突然後ろから声が聞こえたことに驚いて、さよは振り向いた。自分の世界に入っていたせいか、人の気配にはまったく気がつかなかった。
その人はいつからいたのだろう、昇降口を出てすぐのところに静かに佇んでいた。
「……お邪魔でしたよね。突然ごめんなさい」
そう言って申し訳なさそうに頭を下げるものだから、さよは慌てて首を振った。
「そんなことないです」
不思議と、さよは落ち着いていた。
きちんとお話したことはなかったけど、緊張はしていなかった。

いろんな思いが浮かんだりもしたけど。
何も言えずに、彼女の言葉を待つことしかできなかった。
「いいですか?」
彼女の目は、陽の眩しさで細められてはいなかった。
その大きな瞳に、私はちょっとドキッとした。
あまり面識のない人を見ると、すぐに逃げるように去るはずなのに。いろんなことを恐れて、何もできずに終わってしまうのに。

私は動けなかった。それは、決して怖いからではなくて。
(一体何を話してくれるのだろう。)
期待と不安が、同時に大きくなる。怖いというのも、間違ってはいなかったかもしれない。
でも彼女は、わざわざここへ来てくれて、そして私に話をしてくれようとしている。
(私が聞いてはいけないことでは、ないんですよね?)
さよは自分に言い聞かせた。
──きっと、大丈夫。

「はい」
そして私は、彼女の目を真っ直ぐに見ながらうなずいた。
胸の鼓動が早くなって、倒れてしまいそうなくらいだったけど。
その息苦しさも、初めてのことだったから、とても新鮮だった。

私の返事を聞いて、彼女はゆっくりとこちらへ歩いてきた。
そして私と同じように柵を背にして立つ。
感覚はないし、横を向くこともできなかったけど。宮崎さんが服が擦れ合うほど近くにいるのが分かった。

風がまた少し吹いて、二人の髪を散らせた。さよは思わず、上を見上げる。
空はさっきより少しだけ濃くなっていた。赤を背景にして、雲の白い色がとても綺麗だった。

「相坂さん……。」
宮崎さんがそう言ったけど、その先は続かなかった。
話を聞こうとそちらを向いたさよも、何か違和感を感じた。


ぴたりと、風が止んでいた。
いつの間にか静寂が訪れて、さっきまで聞こえていた木々のざわめきも消えてしまっていた。

(え……?)
さっきと同じ場所にいるはずなのに、まるで雪の降る日のように静かだった。
宮崎さんの指が、かすかに震えている。

ただ風が止んで、さっきよりも静かになっただけなのに。自分の鼓動が、息づかいが。痛いくらいに耳へと響いてくる。
そして、徐々にその音は大きくなっていく。

(……っ。)
さよは、思わずしゃがみ込んだ。
少しでも落ち着かせようと、胸を押さえる。
「相坂さん!?」
宮崎さんもしゃがんで、さよの顔を心配そうに覗き込んできた。
彼女も同じように感じているはずなのに、さよほど苦しくはなさそうだった。

そこでさよは、やっと気がついた。
(まさか、あの日の──。)
聞こえる音や彼女の顔、空の色、痛み、苦しさが、すべて重なった。

もう大丈夫だと信じていた。必死で自分にそう言い聞かせてきたのに。

頭が痛くなる。あの高い嫌な音が、耳に聞こえてきた。
鼓動はとてもゆっくりと、でも大きく、全身に響いて苦しい。
息もしているはずなのに、どんどん苦しくなって意識が薄れていった。

(……どうして……。)

すぐ近くにいるはずなのに、宮崎さんの声はとても遠く聞こえた。
彼女の今にも泣きそうな顔を、記憶の端に留めておくことしかできそうになくて。

──遠く、遠く、飛んでゆく。

何かに呼ばれてしまったのか、それとも向かっていくのか。
その場に倒れ込みながら、さよの意識は、どこかへと吸い込まれるようになくなってしまった。
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こんちは!!

2章読みました☆
さよになにがあったんだろうって気になってしょうがないっす

自分、気付くと澪さんの書くssにはまってるんすよね
不思議っす


ぁ、SNSの件っすけど
初コメントした自分が招待してもらちゃっていいのかなって思って…

2008.03.15 22:59 URL | 芳樹 #- [ 編集 ]













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